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2008 02,03 22:25 |
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里帰りして1週間。おかげさまで、親子無事にのんびりさせていただいています。実家ではペースが狂うと心配していた私はどこへいったのやら…人間、楽を覚えるのは早いです。見事にぐうたら三昧。気持ちも丸くなった以上に、見た目がまるーくなってきました。
さて、先日NHKテレビ番組「課外授業 ようこそ先輩」に尊敬する児童文学作家上橋菜穂子さんが出演していました。上橋さんが母校の小学校で授業をする際、出したテーマは「ファンタジーの世界をつくる」。まず、子どもたちに物語の主人公を考えさせます。その後で、主人公を取り巻く世界を考えさせるのですが、その手法が「主人公の食べるシーンを考える」というものでした。 上橋さんの創作する物語で常々感心するのは、その世界のリアルさ。風土に根ざした言語、習慣、食生活、政治…あらゆることが円環となって完成され、物語がぐぐっと強く起き上がってきます。番組内でも、上橋さんは言います。たった一つの食事のシーンを考えても、その国の産業から経済規模、文化、あらゆることがわかってくると。それが世界にリアリティをもたせてくると。例えば、君達の今日の朝ごはんは、材料は誰が作ったか知っているかな?口に入るまでにどんな人の手が携わっているか想像してごらんと。 ふと、同じく尊敬する児童文学作家、ル=グゥインの代表作「ゲド戦記」を思い出しました。 架空のアースシーという世界の中で、主人公ゲドは、もっとも偉大な魔法使いとして成長し、活躍します。しかしながら、物語の後半において、もてる全ての力を使い果たした後に地味な生活を送ります。昔はその展開に意外性を感じましたが、今は強く納得できます。自然を相手に生きる人々、土に根ざした生業の人々。その人たちの感覚こそが、一番正しいのだと。あの時代にあの結末を作り出せた凄さをかみしめます。(まだ読んでいない人、すみません。かなりネタばれです) 現在、食の安全という言葉が飛び交っています。しかし、便利さを追求するならば、何人もの手が入り込み、より見えなくなるリスクは発生します。何でも安く手に入るのは、外国の資源・労働力を貪り取っているからです。当たり前と思っていることも、やっぱり考え直さなくてはいけない時期です。少なくとも、農業や漁業等の第一次産業に携わる人々はもっと尊敬され、保護されるべきだと思うのですが。 ただの一主婦である自分は、毎日の食事を無駄なく、大切にすること。授かった命を育てていくこと。物を減らしてなるべく循環させられる生活スタイルを目指すこと、とやれることから実践してみます。そして、感謝の気持ちを忘れないこと。 PR |
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2007 11,27 16:38 |
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クロニクル 千古の闇3 「魂食らい」 ミシェル・ペイヴァー作
現在注目しているファンタジーシリーズの最新刊。用事で図書館へ行ったとき偶然目にし、時間がないというのに、ついつい借りてしまいました…。 紀元前4000年の太古の地球を舞台としたシリーズ。突然悪霊の熊に父を殺された少年トラクの戦いの物語です。1作目は森から山へ、2作目は海。そしてこの3作目は、極北の大地が舞台です。今回もまた、それぞれの登場人物の謎がふくらみ、因縁の敵との長い戦いが示唆される終わり方でした。 以前もここで紹介していますが、素晴らしい表現力は健在です。著者は極北の地で暮らすイヌイットの暮らしや動物の生態を深く学び、見事に太古の時間を再現しています。体と道具を駆使して極寒の地で生き延びる厳しさ、試練の連続に、本当に目が離せません。敵と戦う場面もドキドキしますが、何より自然の掟を生き抜く厳しさが最大の魅力かもしれません。さまざまな動物が登場し、その特性が見事に物語を支えています。このような題材で、ここまで物語を作り上げられるのかと感嘆します。 今回特に気に入ったのは、主人公トラクの友人である少女レンのクライマックスシーンです。この世の果てのような氷河の地で、レンはとても重要な役割を背負わされるのですが、これがまた神話のように美しいシーンです。場面を想像しては、ためいきがこぼれます。 娘が寝たときしか読めませんから、ゆっくり読書できるのはまだまだ先ですね…。 |
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2007 06,02 16:23 |
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「ギフト 西のはての年代記Ⅰ」 ル=グウィン著 河出書房新社
世界三大ファンタジーの一つ、「ゲド戦記」でもよく知られるアメリカ人作家、ル=グウィンの新作長編。全三巻の予定の一冊目。ここでも架空の世界を舞台に、彼女ならではの重厚な物語が展開されます。 主人公は16歳の少年オレック。低地の町に住む人々からは「魔法使いが住む」と恐れられる高地で、一族を代表する父と、低地から嫁いだ美しい母と暮らしています。辺鄙な丘陵地帯で、放牧や農業でどうにか質素な暮らしを続けてきた高地の人々。その過酷な土壌に暮らす民は、各部族で異なった特殊能力「ギフト」を親から子へと代々受け継いでいきます。何故オレックが父に目を封印されて盲目として生きていくことになったのか…。主に「ギフト」の力をめぐる父と息子の葛藤を中心にして物語は展開していきます。 限られた資源で暮らすがゆえに、部族間での土地・家畜の争奪戦があり、また跡継ぎを残すための政略的な結婚や女性の争奪戦。攻撃的な強い「ギフト」(生き物を殺したり支配する力)を持つ部族が栄え、病を見つけたり、生き物と交流するような穏やかな「ギフト」を受け継ぐ部族は、生き延びるために他の部族との関係を保ったり、奥地でひっそりと暮らす等の道を選択する。高地の村を舞台にあくまで静かに進行する物語の中で、違った能力を持つ部族のそれぞれの歴史や暮らしぶりがさりげなく織り込まれ、主人公が生きる世界にどんどんひきこまれていきます。全体的には緩やかで地味なリズムでありながら、一冊の本の中に、実に豊かな言語と哲学、物語る力が完成されています。 「ギフト」を使うという行為は何なのか?そもそも何故こういった能力が存在しているのか?主人公と彼を支える少女は、強い力を授かった身ゆえに、深く悩み考え、決断をしていきます。大人からも世界からも安易に答えは出されません。問いが発され、それについて思索し、生きていく姿は、そのままこの物語を読む読者にも当てはまります。ル=グウィンが示す物語は、読む側にゆだねられています。 現在陣痛の波が押し寄せていますので、ちょっと駆け足で読みきりました。本来ならば、もっと一つ一つの言葉を吟味しながら読みたい作品です。個人的には、イタリアの言語学者ガヴィーノ・レッダの自伝小説「父 パードレ・パドローネ」の世界と重なりました。(イタリアの田舎の島で、厳格な父のもと、学校教育も受けられず、厳しい自然の中で羊飼いとして育てられる少年の物語です) |
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2007 05,26 17:43 |
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「エルデスト ドラゴンライダー2 宿命の赤き翼 下」 クリストファー・パオリーニ著
架空の世界を舞台に、ドラゴンと力を合わせ戦う戦士・ドラゴンライダーの成長の物語。全3巻のうち、ようやく第2巻の後編を読みました。(第1巻「エラゴン」は先日映画化されました。観ていませんが…) 表題「エルデスト」の意味が下巻の最後にやっとわかるのですが、なかなか主人公のこれからの苦難の道が想像され、意外な展開を見せています。第1巻や第2巻の上巻では物足りなく感じた物語の厚みも、下巻に進むと、幾つかのエピソードがふくらみ始め、面白くなってきました。 基本は、エルフやドワーフ、暗黒の生き物、魔法や剣が炸裂する冒険ファンタジーであり、少年だった主人公が過酷な旅と戦、修行を通じて成長する王道のストーリー展開です。下巻ではさらに、ドラゴンの生態の描写や、魔法のエネルギーの形態・歴史など独自の理論も豊富になっています。 戦闘シーンも迫力があり、人が死んだり血を流す場面もリアルです。残酷な王が君臨し、自分より下等な生物なら殺す、絶対の悪は迷わず滅ぼすという世界。生きるため、世界をよくするために主人公も悩みながら戦うのですが、理想のためとはいえ、戦争は避けたいという思いは深まります。魔法や剣の強さを高めていくということでしか相手を倒せず、世界を変えられないという設定がなんともつらくなります。 とはいえ、ここまできたので、第3巻が出版されましたら、最後まで読もうと思っています。 |
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2007 05,13 22:27 |
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「蒼路の旅人」 上橋菜穂子著
上橋さんのファンタジー大作「守り人シリーズ」の外伝、チャグム皇子主役の物語の2作目を読みました。これであとはシリーズ完結作となる「天と地の守り人 三部作」を残すのみとなりました。(さみしい!) ここにきて、またシリーズ第1作目「精霊の守り人」を読み返し、「こんなにチャグムが成長したのだなあ」と感動もひとしお。脇のキャラクターの変化にもじんわり。 「守り人シリーズ」は、国家を超えて自分の信念で生きる女用心棒バルサと、国を背負った運命に翻弄される皇子チャグムが第1作目で出会います。その後のシリーズで二人は別々の人生を歩み、違う立場から広大な世界を生き抜きます。やがて最終作「天と地の守り人」で、大きな闘いの渦にのまれた二人が再び出会う…といった構成となっています。 シリーズを読み込むごとに、世界情勢と各登場人物の変化が巧みに語られ、どんどん物語の深みがましていきます。 世界三大ファンタジー(指輪物語・ゲド戦記・ナルニア国物語)にもひけをとらないこの作品。是非シリーズを通して読んでほしいです。 |
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