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2008 12,01 14:51 |
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「わたしの名は紅(あか)」 オルハン・パムク作 藤原書店
トルコのノーベル賞作家、オルハン・パムク氏の小説をやっと読むことができました。 舞台は16世紀末、オスマン・トルコ帝国の都イスタンブルの細密画師の世界。才能ある細密画師の一人が殺され、その犯人は誰か?という主題が、章ごとに異なる人物(あるいは存在)の口から迷宮のように語られます。各章の視点のユニークさ、イスラム教の文化や知られざる細密画の世界、市井の人々の愛憎が鮮やかに描かれています。 画家を目指していたという作者が書くだけあって、「絵とは何か」という哲学的な問いが本を支配しています。特に、イスラム世界の挿絵や細密画師の物語は読んでいてめまいがしてくるほど濃密です。 自分の住む日本とは、明らかに違う世界が豊かに広がっています。女性という存在の不気味さ、したたかさの描き方もおもしろかったです。 「絵」とは、本当に美しいものなのに、その美しさを描こうとすると醜さが際立ってきます。美しい芸術に囚われた人間の、なんと愚かで醜いことか。シェイクスピアの台詞を思い出します。 「きれいはきたない。きたないはきれい。」 この物語は醜さで満ちています。だからこそ、絵の美しさや怖さも伝わるのでしょうか。 PR |
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2008 03,17 23:37 |
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「狼たちの月」 フリオ・リャマサーレス作 ヴィレッジブックス
「黄色い雨」で心奪われたスペインの作家、リャマサーレス氏のデビュー作が翻訳され、手に取ることができました。 1937年スペイン内戦時代。敵に包囲され山に逃げ込んだ人民兵の、9年にわたる凄惨な逃亡生活を描いた小説です。「黄色い雨」でもそうでしたが、内容は悲惨で、絶望と暴力に満ちているのに、どうしてこの人の小説は美しいのでしょう。本が、文章が、言葉が、限りなく美しい。 「 ほら、月が出ているだろう。あれは死者たちの太陽なんだよ。」 主人公の父親の言葉が指し示すように、闇にまみれて生きるしかない主人公達ゲリラ兵に寄り添うのは月。血塗られた狼が見ることができるのは、死者の太陽。この題名が持つ力だけでも、感嘆。この小説に登場する月の姿は、今までになかったかたち。 最近は余裕のない生活を送っていましたが、そんな心にも、しみわたる小説でした。無条件に、「愛している」と叫びたくなる作家です。 |
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