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2008 01,13 16:01 |
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以前紹介した詩人・石原吉郎氏の新聞記事の続きです。 昨年の連載は、「封印」というキーワードにより、シベリア抑留時代の記憶を封印して詩を発表していく戦後の生活が書かれていました。やがて、帰国から15年を経て、石原氏はシベリアの体験をエッセーで書き始めます。今年の連載は、「記憶」というキーワードにより、彼が何を体験し、どんな記憶を背負ったかをエッセーをもとに追っていく内容が始まりました。 今年のスタート記事に添えられていたのは、香月泰男の「シベリア・シリーズ」の絵です。 石原氏を知る前は、シベリアといえば香月氏がすぐに思い浮かびました。亡くなるまで、シベリア抑留体験をテーマにした絵を描き続けた山口県の画家です。 彼の絵は非常にシンプルで、深い黒の中に、抽象的ともいえるモチーフが浮かび上がる様式が多いのですが、実際にみてみると、色の鮮やかさと、モチーフの強さが迫ってきます。連なるシベリアの絵を見てまわったとき、一人の人間が、生涯こんな地獄の記憶を背負って生きていかねばならないのかと、大きな恐怖に襲われました。戦争を生き残った人の終わらない苦しみ。今でも、彼の描いた死人の顔や炎がごうごうと浮かび上がってきます。 石原氏も一度だけシベリア・シリーズを見に行き、印象をこう書き残しているそうです。 「ほとんど黒一色にぬりつぶされ、忍苦そのものと化したかにみえる無数の表情。だが私は、これらの表情へ盛上げ、抑えつけた絵の具の層の下に、望郷のねがいそのもののような緑とばら色のイメージをありありと看取できた。」 戦後、香月氏は「私の地球」と呼ぶ故郷三隅町と、家族をこよなく愛し、身近なモチーフを描き続けています。限りなく穏やかな暮らしの中に、隠しきれないシベリアの記憶が噴出し、生涯描かざるをえなかった画家。 石原氏は、戦後の日本社会に馴染めず、故郷とも絶縁し、もがくほど、封印してきたシベリアの記憶へと立ち戻っていきます。シベリア帰りというだけで受けてきた数々の差別。強制収容所では人を蹴落としていかねば生き延びられない…戦争が終わったはずの日本においても、電車に乗りこむにも仕事をするにも他人を押しのける構図を目にして、石原氏は深く傷つきます。誰とも共有できぬ感情…。「虚の顔」と形容された表情。激しく屈折した内面が、詩となり文章となり発表されていきました。 彼の孤独・絶望に強くひかれます。今年はゆっくりと著作を読み、言葉に出会いたいです。 香月泰男 「青い太陽」 シベリア・シリーズの一枚 PR |
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