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2008 04,18 14:21 |
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「天と地の守り人」<全三巻> 上橋菜穂子作
「精霊の守り人」から始まり、10年にわたって出版されたこのシリーズも、ようやく最終章を読み終えました。 「チャグム~!」 我が家ではこれがしばらく合言葉となっていました。最初の「精霊の守り人」では、幼く、用心棒バルサに守られるばかりの少年が、この最終巻「天と地の守り人」では、大きな戦争を止めるために、独り過酷な旅を成し遂げるのです。実の親(帝)に何度も暗殺されかけ、亡き者とされても尚、その祖国の民を救うために、己を捧げます。その捨てっぷりが見事です。皇太子のプライドも、命さえも投げ出し、汚名と人を殺める業もまた、一身に引き受けます。そうしなければ、国を救えないとわかっているからです。全10冊にわたる守り人シリーズは、チャグムの視点からみれば、なんと大きな成長の記録となっているでしょう。最終章でまた最初の物語へ帰っていく嬉しいエピソードもありました。 一方、本来の主人公、女用心棒バルサもまた、最後まで「守り人」として戦い続けます。「用心棒と言えば聞こえはいいが、結局は金で命を守る仕事」と言い切る彼女も、第一巻で皇太子チャグムを守ったときから、ゆるやかな変化を迎えています。数え切れない修羅場を潜り抜け、鬼神のごとく強い彼女も、命の重さや尊さ、己の業の深さに逡巡し続けます。戦う場面の格好良さと共に、ゆれ続ける女性性の描写にまた、親しみがわいてきます。彼女だからこそ、「戦士」ではなく、「守り人」となれたのではないかと。そう、「守る」ことが、このシリーズの大きなテーマ。何かを守るためには、当然捨てなければならぬものもでてきます。混沌として、矛盾だらけの世界で、人は何を守っていくのか。守らなければならないのか。登場人物一人ひとりが、その答えを出していきます。自分さえよければいいという人はまた、必ずその答えが帰ってくるのでしょう。それは、自分の生きる現実世界も同じこと。 最終巻「新ヨゴ皇国編」では、戦場の生々しさが描かれています。戦争だけはしたくない。しないで多くの人が共存できる世界がいい。 この大きくて力強い世界を、またいつか、最初から読み直したいです。 PR |
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