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2007 05,31 11:52 |
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『われわれの』国はその歴史の大部分を通して私を奴隷として扱ってきました。それは私に教育を、あるいはその所有を共有することを拒否してきました。『われわれの』国は、もし私が外国人と結婚するなら、今でも私の国ではなくなるのです。
「三ギニー 戦争と女性 」 ヴァージニア・ウルフ著 (1938年) みすず書房 以前、偶然目にした新聞の書評に、上記の部分が紹介されていました。その過激な一文が記憶に残り、気になる一冊に加わってた長編エッセイ。その後小説「ダロウェイ夫人」を読み、ウルフの表現力の深みに心酔し、このたび念願のこの本を手に取ることができました。 ギニーとは当時イギリスで使用されていた硬貨の単位。ウルフは書簡という手法を用いて、戦争を未然に防ぐために女性は何をできるかというテーマを論じていきます。その中で、この「三ギニー」の使い道が戦争予防のためにできる行為の象徴となっています。 ウルフが論旨をまとめるにあたって、膨大な量の伝記や新聞記事等を証拠として差し出しているために、文章に挿入される注訳の量も著しく、小説と同じく次から次へと流れるような独特な文体のため、短いページ数ながら、読み込むのは時間がかかります。しかしながら、ウルフが手品のように開いてみせる華麗な手さばきによって、19世紀から20世紀にかけて、祖国イギリスでの女性の置かれている立場の変遷、女性の自立に対する根強い反感の実態について、具体的に知らされます。今なら嘘のようにさえ思える現実─政治・教育・宗教・芸術・報道の世界においても、各家庭にはびこる家父長制度においても、権力と支配欲と闘争心に守られた男性の意識がいかに堅固で、女性がいかに劣った存在として刷り込まれ、社会から締め出されてきたか─、改めて驚きます。ファシズムと家父長制度の根底に共通にあるもの、権威や名誉を何よりも重んじる、所有欲から成り立つ男性が支配する社会が愛国心を育み、戦争を必要とする構造…ウルフの示す論点は明解です。女性が(偏らない)教育を受けられること、それによって経済的に独立できること、かつ自分のお金を自分が支持することに使えることが、戦争を防ぐための重要な一歩である。今まで一人前と扱われなかった女性だからこそ、アウトサイダーであることを維持することで、この戦争を支持する社会構造を拒否できる視点をもち、行動できる。子どもの頃よりうつうつと感じていたこと…経済の自立なくして自分らしく生きてはいけないと考えていたことが、この本を読んで、明確に提示されているので嬉しく思いました。 現代の私たちなら当然と享受している、教育を受ける権利、労働の対価として金銭を受け取る権利、政治に参加する権利…その意味を確認せざるをえません。なおかつ、ウルフは「フェミニズム」という言葉はもう必要ないので燃やしましょうと語りかけます。「万人の権利─すべての男女─正義、平等、自由という偉大な原則に照らして各人がもつべき権利」を主張すること。 実際のところ、女性として私には祖国がないのです。女性として、私は祖国が欲しくはないのです。女性としては、全世界が私の祖国なのです。 当時、ファシズムが現われ世界が再び戦争へと向かっている時代に、ここまで未来を見通して、勇気を持って主張したウルフ。是非読まれるべき本だと痛感しました。 PR |
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